ハワイ研修を振り返って

 2年研修医澤田です。今回は前回前振りをしたハワイ研修について書こうと思います。
 ハワイにあるThe Queen’s Medical Center(QMC)へ、機会をいただき2週間(6/11~6/25)行ってきました。
山岸院長先生がコロナ前に準備していただいた企画で、それが数年越しに実現しました。
 ホスピタリスト(Hospitalist)として、QMC Associate Medical Director, Division chief of hospital medicine、また亀田総合病院 総合内科部長をされている野木真将先生にshadowingという形で、2週間毎日つきっきりで面倒を見ていただきました。
          
私は、ホスピタリストやアメリカの医療システム、医学教育システムに興味を持ち見学したいと思い研修を決めました。今回実際に、見聞きしてきたことの一部を以下に記します。
<ホスピタリストについて>
まだ、日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
日本では、各診療科がそれぞれ外来から入院まで担当し診療にあたっています。
一方で、アメリカの病院は、基本的*に入院患者はHospitalistが一手に引き受けマネジメントしている、Generalistであり病棟管理の専門医です。*産婦人科、精神科、小児科、外傷外科を除く
必要に応じて循環器、消化器の専門医に特異的治療を依頼する形になっています。
QMCは575床のハワイ州の高度急性期医療施設で、一部ICUと産婦人科病棟を除く380床をHospitalistが管理しているそうです。
<実際の研修体制・内容>
QMCはハワイ州、太平洋諸国の高度急性期病院。
野木先生のレジデントチームに加わりHosipitalist業務を見学。
チームの構成は指導医(野木先生)、レジデント(3・2年目)1人、インターン(1年目)2人。 
レジデントチームは1チーム15人までと決まっており、1日あたりの入院患者も1人5人まで。
入院期間が非常に短い!(Hosipitalist担当の平均在院日数は7日以下)
そのため、毎日入院患者がおり症例数・ボリュームも豊富。
症例:心原性ショック、蜂窩織炎、消化管穿孔術後の腹腔内膿瘍敗血症ショック、意識障害、脳梗塞、転倒による体動困難、覚醒剤使用患者のIE、DLBDLの化学療法、UC増悪ステロイド投与後のDKA、ICD交換、DVT、結核など
カンファレンス・ラウンドで1人の患者にかける時間は30~45分ほどとかなり丁寧。
その都度フィードバックや最新のエビデンス、診療する上での注意点などのレクチャーが行われていて、疾患・病態に関する知識も2週間でかなり教わった。
型(フレームワーク)を身につけることを常に意識されて教育を受けていた。
        
<医療システム・形>
プロフェッショナルの担保、人格を含め他者の評価を受けやすい環境が構築されていた。
例)技量・人格評価がコンサルト=仕事をもらえるかに直結している
  Residentの給料は州の税金から→住民から評価を受ける
  客観的な評価
  (試験による資格更新制度、学生、Residentからの評価次第で指導医継続が決まる)
アウトカムをしっかり設定した上で、データを取り、結果を踏まえて次の改善を促すシステム。
分業化がかなり進んでいる。
  看護師1人あたり2人の補助員→Nsのメインの仕事時間確保できる
  採血専門の技師
  ワクチン接種は薬局で薬剤師が行う
  呼吸療法士 人工呼吸器の管理、抜管まで行う
再掲)入院期間が非常に短い!(Hosipitalist担当の平均在院日数は7日以下)
退院先は家か、ホスピス、SNF(看護師メイン、90日入手可能な地ケア病棟のような施設)、ホームケアサービス、シェルターなどさまざまな退院先がある。
家族は基本毎日病院につきっきり。
社会制度として家族の入院中は仕事を休め、解雇されない、給料も保証される。
<Trauma Surgery見学(2日)>
研修中にThe Queen’s Medical Center, Acute Care Surgeon, Associate Trauma Medical Directorの古田将先生にお会いする機会をいただき、Trauma Surgeryチームを見学する機会を得ました。
QMCはハワイ州唯一の Level 1 Trauma centerでさまざまな患者さんが来院する。
(頭部外傷からERですぐ開胸するような症例まで)
病院内でTrauma CallがなるとERに向かう。
Trauma Surgeryは血管系を含む外傷の診療・手術を行う。
外科Residentは5年間で、終了までに一匹狼になれるように教育を行っている。
特に驚いていたのはPhysical Assistantの存在です。
Residentと初め見分けがつきませんでした。
問診、オーダーはもちろんのこと、朝のカンファで症例提示や頭部外傷の洗浄、ステイプラーまで。(Ope室では胸部手術の開胸、グラフト摘出まではPAが行っているそうです。)
        
<ER>
ERだけで40程ののベッド。それでも足りず廊下のベッドにいる患者も多く見られた。
救急車呼ぶのが高額のためほとんどの患者がWalk inで来院する。
それを看護師が全てをトリアージして優先順位をつけている。
保険の関係で入院の閾値が高く、入院適応のない患者をベッドで休ませて返すこともできる。
ERで完結する/した状態で入院(北米型ER)
           
<全体を振り返って>
どの職種もプロ意識を強く感じました。それぞれの役割を理解していて、互いに対等にリスペクトし、仕事をしていました。スタッフ個人それぞれの知識のベースが高い印象も受けました。
疾患の解像度という言葉が特に印象に残っています。勉強に励みたい所存です。
 今回、野木先生には、2週間つきっきりで面倒を見ていただきました。
お忙しい中、時間をつくってくださり、たくさんのことを教えていただきましたし、多くの刺激をいただきました。本当に貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。
                
 そのほかにも、レジデントの先生方、外科では古田先生、山内先生など多くの先生、スタッフの方々、プログラムを作ってくださった当院の山岸院長、さまざまな方の支援のもとで、今回ハワイへ行き研修をすることができました。改めて、感謝申し上げます。
 そして、ともに研修をした小林にも感謝いたします。
教わったことを練り上げて、日々の診療、研鑽に励んでいきたいです。





Next Post Previous Post